前記事「取引保証金名目の詐欺」の続きです。

まず、与信という視点は、利益を得られる可能性を図るのではなく、損をする可能性を図ります。

当たり前のようですが、当事者であり、特にバリバリやられている中小企業の経営者であったりすると、利益を得られる可能性を図るのが癖になっていたりして、助言やアドバイスが必要なときが多々あります。

助言やアドバイスをする側は、損をする可能性があるのであれば、それを避けることが利益であるという視点を守らなければなりません。

「取引保証金名目の詐欺」のケーススタディーで、具体的に説明していきます。

取引に際して保証金や立替金が発生するということは・・・

「一般論で考えて、仕事を受託するのに、委託側に対して明確でない立替金または保証金を納めるのは商習慣上おかしい。」

「不正競争防止法上でもおかしい。」

これが真っ当な判断だと思います。

普段経験している取引より少し大きな取引の場合、謙虚な経営者であればこそ、このような取引もあるのかもしれない、チャレンジしなければ・・・そんな心理が働くのは致し方ないと思います。決して欲張りだとは思いません。

ただ、そういうときこそ、一つ視点を増やし、一般論、ゼロベースに立ち返ってみてほしいのです。

すると、現実的なものが見えてきます。

「普通であれば、つなぎ融資が受けられる案件であり、金融機関に信用をつけられる良いチャンスである。」

です。

ということは?

つなぎ融資をやらないのは、嘘をでっちあげた詐欺話であるか、多重債務で金融機関から借りられない状態であるか、既に同じ理由で金融機関や他会社から同様にお金を得ているかのどれかである、と見えてきます。

しかし、相手も詐欺師ですから、「いろいろとやっている会社だからそんなことはないだろうと思わせる」に足る材料を用意してきます。

例えば、前記事に書いた「化粧程度の仮設事業」「本物と見極めがつかず、裏も取りにくい受注書」など。

化粧程度の仮設事業は、その事業のビジネスモデルを知らなければ利益算出や運営規模を特定できませんが、調査会社の5万円ほどの調査でそれなりの情報は得られます。

受注書に関しては、業種にも拠りますが、予算を握っている部署を特定し、同案件に対してどのくらい予算を割くのかを現実的に聞き取ることが必要です。

このケースの場合は、キー局のテレビ番組制作におけるコーナー制作費でしたが、1,500万円という数字でした。ゴールデンの特番であっても、コーナー制作費で、いまどきそんなに出るでしょうか。

以上、ざくっとではありますが、これらで、損をする可能性についての与信の尺度を理解して頂けたでしょうか。

ここまでが重要ですが、これで終わりではありません。

取引を前向きに考えざるを得ない場合です。
人間関係、しがらみ、いろいろな理由が経営には存在するでしょう。

そんなときは、確実に、回収できる可能性についても検討してください。
金融機関で言う「担保」という概念を思い浮かべてみればよいでしょう。

まず、その元請けの会社に可視化された資産がありますか?

なければ、決算書などを見せてもらえる関係性がありますか?

普通は難しいでしょう。

でも、回収といった視点に立った場合、それ以上に突っ込まねばなりません。
お金を貸すという視点で見ることが、回収できる可能性についての必要十分な検討なのですから。

つまり、決算書を見せると言われても突っぱねるくらい、やり取りの先を見越したコミュニケーションに徹する必要があります。

なぜなら、決算書を税務署用、銀行用などと分けている会社もありますし、そもそも前期の財務状況です。決算書に載せない事項があるケースも世の中には多いのですから、決算書だけで、回収の可能性を判断する現実は見えてきません。

大事なのは、損益とキャッシュフロー。

損益はこれから上向くとしても、キャッシュフローはすぐに付いてきません。黒字倒産だって有りえます。

だからこそお金を出せと言われているのだ、などと納得せずに、思い切って銀行の通帳を見せてもらいましょう。

気持ちよく仕事をするためだとか、必要部分以外はコピーで墨入れしてもらっても構わないとか、ここらのトークは、今後の関係がどのように転んでもうまくいくようなコミュニケーション基準で頑張ってください。

それで断られれば「×」と判断し、もし銀行の通帳を見せられて良い状況であれば、こちらが出さなくても良いわけですから、金融機関のつなぎ融資を探して教えてあげれば良いのではないのでしょうか。

それでも出さざるを得ない心境になることってあるのでしょうか?

お金を貸すのが業でもない限り、ちょっと計りかねますが、
万一そうなったら、最後に、信頼できる人物であるかを見てください。

まずは、きちんと自営している人に限定してください。
いわゆる雇われ社長であるということは、意思決定がすべてその人ではないわけですから、そのような基準で見ても意味がないケースが多いです。

難しくはありません。
何でもよいので、細かいことを約束していくことです。

それを守る人、すなわち、自身の言葉を大切にする人であるかどうか、というところです。

以上、一つの与信の尺度を挙げてみました。

こんなこと、いちいち考えてられないよ、そんな方も多いと思います。
そんなときは、その視点のみ肩代わりさせて頂きます。

というより、今回のケースでは、そんな立替金なしで仕事をもらえるように、強く明るく交渉するのが一番です。

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