探偵業を営む「探偵社」には、いくつかの種類があります。

今回は、「探偵社」を、調査の種類やクライアントが企業であるか個人であるかで分けるのではなく、経営母体によって考え、私共が経験した悲しい契約破棄のお話をしたいと思います。

まず、探偵社を大きく分けて、法人と個人事業主です。

法人であっても個人事業主と変わらないところもあるのでしょうが、法人を存続させていく以上、大抵は事務所を構え、社員を抱え、安定した売上の営業体制を組み、「探偵」といった少し怪しげな雰囲気を払拭するよう、誇りをもって企業努力されているところが多いと思います。

一方、個人事業主の方は(今回のお話の主旨はこちらなので、どうしても少しネガティブ拠りです)、残念ながら、なるべく経費の掛からないインターネット営業と自宅兼事務所で、毎月の自分の財布と睨めっこな感じが多いようです。職種柄もあって、良く言えば個性的な人が多く、コミュニケーションの基準点に、同業の私でも戸惑うことがあります。
(もちろん、そうでない方も知っています。)

さて、これら探偵業を営む個人事業主、そして、中小法人の間では、各自の営業の元に成り立った調査案件で調査人員が不足したとき、共に現場を助け合う習慣があります。

他の業界にもある「振り」「振られ」の関係です。一般的に言う、業務委託、業務受託です。

この同業ネットワークが確立されていれば、わざわざ固定経費をかけて従業員探偵の教育に精を出さなくても、プロ同士の業務委託関係で、気持ちよくプロジェクトがこなせるわけです。

特に、探偵には、教育や事務仕事よりも現場好きな人が多いですから、同業ネットワークを確立し、個人事業の範囲で継続させていくことは、一つの価値観なのだと思います。

しかし、難点もあります。
同業同士での振り振られの仕事には、だいたいの相場があって、大概は、自受けの調査案件よりも半分以下の売上になるのです。

ですから、自受けの仕事が多い時期には、他から振られる仕事は断れば良いのですが、自受けの仕事がない場合には、他から振られる仕事も積極的に受けなければ、売上が立ちません。

そんな「振られ」の仕事をこだわらない人もいるのでしょうが、業界長い方は大抵、気にしてしまうところでしょう。

例えば、他から振られた仕事の現場をやっているときに限って、自受けの仕事が転送電話などで入ったとします。商売ですから、その売上欲しさ、ご依頼者を逃したくない気持ちが先に立ってしまうこともあるでしょう。そして、他との信頼関係を天秤にかけ、明確な優先判断ができずジレンマを感じ、皮算用してしまったりする気持ちもわかります。

私共も、地域に拠らず、多くの同業の方と連携を結び、1営業所ながらも、時には3現場で15探偵などという調査案件を実現してきました。

探偵業法施行以降、委託を伴う際は、その旨を重要事項としてご依頼者に開示する義務がありますが、上記の同業個人の事情をできる限り思い量って、スケジュールを作り、ご依頼者との契約の調整などを図らなければなりません。

そのような努力虚しく、私共7年の営業の中でも初めての出来事がつい先月ありましたので、ご紹介させてください。当然名前は伏せますが。

■ある木曜日

【弊社】
「翌週水曜日からの調査現場でお手伝いして頂けませんか。」

【3年ほど付き合いのある探偵A】
「翌週月曜日からは空いていますけど、自分のところの案件が入るかもしれないので・・・月曜日の時点で空いていたらやらせてください。」

センシティブな案件のため、私どもは信頼できる探偵のスケジュールを確保する必要がありました。他の信頼できる探偵にも数人連絡を取りましたが、あいにく皆、先約があるようでした。

そこで、私共は、ご依頼者との契約を火曜日に延期し、探偵Aがダメなら、調査開始日を延期しようと考えました。

■翌週の月曜日

【探偵A】
「空いていますから、水曜日から大丈夫ですよ。」

これで、調査実施が可能となり、翌日火曜日の午前中にご依頼者との契約となりました。

■翌日の火曜日 午前11時頃

【探偵A】
「やっぱり自分の案件が入ったんで、キャンセルでお願いします。」

探偵Aは、私にではなく、社員に連絡をしました。
私は、ご依頼者との契約が終わったところで、社員よりその旨の連絡を受けたわけです。

私は、ご依頼者の利益、調査品質を優先し、準備や作戦会議が不十分となる可能性が高いその調査を中止しました。そして、探偵Aに対しては、口論を避けるために電話ではなく、メールにて丁重に苦情を申し上げました。

すると、探偵Aは、

「私は普段から、自分の案件が入ったらそちらを優先している。そういう理解をして頂ける人としかお付き合いしていない。」
「自分の案件も他の案件も平等にやるってのは理想的ですが、それで迷惑をかけたこともたくさんあるんで。」
「生活のためにやっているのだから、それはそちらも同じでしょう。」
「それより、そちらこそ、これまでの信頼関係をなくすつもりか、お答えください。」

などと、ひとつのメールに書き連ねてきました。

私は、ご依頼者の対応に追われながらも、決定後のキャンセルであること、ご依頼者との契約後のキャンセルであること、前日キャンセルであること、謝罪を頂きたいこと、これらは総じて商習慣を逸していること、などを丁寧に書き、改めて謝罪を求める返信をしました。

しかし、その後は、返信がありませんでした。

ちょっと文末が纏まらないお話でしたね。
お読みになって、重いため息を出させてしまっていたらすみません。

探偵も職人に近いところがあります。
きっと、ものすごくコミュニケーションの上手くない方なのでしょう。

故意ではないのに、他人に迷惑をかけてしまったことが、招かざる出来事に感じて、不知だったとも納得できず、自分とも他人とも折り合いを見つけることができず、思わず自分の理屈を説明してしまったのでしょう。

トラブルや非日常に立ち向かう探偵たる者、もう少し上手く世を渡っていけることを祈ります。

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